日本人の美意識とはどのようなものでしょうか。
西洋の芸術と比べると、日本の芸術は「なにもない」ことを美しく感じる傾向があります。日本は自然や空間に対し敬意を表し、デザインは繊細で、かつ簡潔な色彩を好みます。文化的背景や歴史的背景によるものであり、その美意識は日本独自の美意識となっています。
この「なにもない」美は、水墨画や伊勢神宮などの代表的な作品に見ることができます。
水墨画とは、墨だけで描かれた絵画のことです。
水墨画では、白い紙の部分も重要な役割を果たします。
白い紙は空間や光や気配を表現することができます。
例えば、雪景色を描く場合、白い紙は雪や霧や空気を表すことができます。
水墨画では、描かれているものだけでなく、描かれていないものも想像力をかきたてられます。
このように、水墨画は「なにもない」ことを美しく見せる芸術です。
伊勢神宮とは、日本最古の神社の一つです。
伊勢神宮では、20年ごとに新しい社殿を建てて古い社殿を取り壊すという伝統があります。
この伝統は、自然の流れに従って物事が変化することを尊ぶ考え方から来ています。
伊勢神宮では、社殿の中に神様がおられることを信じていますが、社殿の中は誰も見ることができません。
社殿の中に何があるのかは想像するしかありません。
このように、伊勢神宮は「なにもない」ことを神聖に感じる場所です。
日本人は、「なにもない」ことに深い意味や価値を見出すことができます。
「なにもない」ことは、余白や空虚や無常という言葉で表現されることがありますが、
それらはネガティブな意味ではありません。
「なにもない」ことは、自然や神秘や可能性を感じさせることでもあります。
「なにもない」美は、日本人独自の感性や哲学を反映しています。
私たちの生活の中でもこの「何もない」ことに美を感じることがあるのではないでしょうか。
例えばミニマリストです。
ミニマリストとは、持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人のことです。
自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられるという考え方で、
大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイルです。
散らかった部屋や物が雑多におかれた部屋などより美しさを感じるのではないでしょうか。
そして、今までとは違う新しく生まれたライフスタイルは、
日本人が昔から感じていた「何もない美」に通づるところがあります。
今、現代を時代を美しく生きるために、私たちは昔からの美の感覚を生かしつつ
新しい「何もない美」を取り入れて、温故知新、
地球にも自分にも優しい美しい世界を生きていければと思います。